胆管がんの病期と治療

自分に合った治療法の選択

 治療方法は、すべて担当医に任せたいという患者さんがいます。一方、自分の希望を伝えた上で一緒に治療方法を選びたいという患者さんも増えています。どちらが正しいというわけではなく、患者さん自身が満足できる方法が一番です。

まずは、ご自分の病状を詳しく把握しましょう。

あなたの体を一番よく知っているのは担当医です。

わからないことは、何でも質問して、自分に合った治療法を選択することが大事です。

他の患者さんの治療と比べても、ご自身にあてはまるとは限りません。

(病状、年齢、既往症、処置など個々に異なります)

 

病期

胆道がんの病期分類には、国際分類(国際対がん連合:UICC,第8版)と国内分類(胆道癌取扱い規約,第6版)があります。基本は、

  1. 胆道におけるがんの拡がりT因子)
  2. 胆道近傍のリンパ節転移の有無N因子、N1:転移あり)
  3. 遠隔転移の有無M因子、M1:転移あり)

から構成されますが、国際分類と国内分類が一致しない部分もあります。胆道がんの部位ごとに規約が異なるため、非常に複雑になりますので省略します。

(なお、肝内胆管癌は、肝臓に発生する癌ということで、規約上は原発性肝癌として扱われます。)

 

日常の診療においては、手術できるか否かで大別し、ステージ分類はあまり用いられないこともあるようです。

 

治療

●手術療法

 胆管がんは手術が唯一治癒の期待ができる治療です。胆管がんでは定型術式といったものはなく、がんの広がりに応じた、安全でできるだけ根治的な術式が選択されます。


胆管がんの手術は、手術規模がかなり大きくなること、肝臓や膵臓(すいぞう)などの生命に極めて重要な臓器に直接処置が加わることで、術後合併症や手術死亡は他のがんの手術より高リスクであるのが現状です。また、手術後の再発率も決して低くありません。手術を受ける前にはその手術でどのようなメリットがあり、どの程度の危険度があるのかをよく理解しておく必要があります。

 

  肝門部領域胆管がん

肝門部から胆管、門脈、肝動脈が分岐していく複雑な構造の影響で、肝門部領域にできたがんの手術には高い技術が必要となります。根治的手術のため、まわりの肝臓、胆のう、リンパ節はほぼ切除され、膵臓も合併切除することがあります。合併手術によって組織や臓器が切り離された場合、胆管や十二指腸を通っていた道をつくるため、縫い合わせる再建手術行われます。広範囲に肝臓を切除する場合には術前門脈塞栓(そくせん)術を行い、残す肝臓を大きくして肝不全を防ぎます。

 

  遠位胆管がん

遠位胆管にできたがんは、胆管が膵臓を通っているため、膵臓へ広がりやすい性質をもっています。そのため十二指腸と十二指腸に接している側の膵臓(膵頭)を切除する、膵頭十二指腸切除が基本術式になります。切除後は再建手術で、残った膵臓を小腸や胃に縫い合わせ、膵液が小腸や胃に流れるようにします。同様に、胆管と小腸、胃と小腸をつなぎ合わせます。

 

  肝内胆管がん

がんが肝臓の端にある場合には、肝部分切除を行います。肝臓の左葉(肝臓の左側およそ1/3)と右

(肝臓の右側およそ2/3)を越えてがんが広がっている場合や、肝門に近い場合には、大きく切除する

必要があり、胆のう切除やまわりのリンパ節郭清も行うことがあります。広範囲に肝臓を切除する場

合には術前門脈塞栓術を行い、残す肝臓を大きくして肝不全を防ぎます。

 

  胆のうがん

胆嚢癌だけでも小さな手術から大きな手術まで幅広くあります。早期の胆嚢の場合、胆嚢のみ切除す

る術式で済みますが、周囲臓器への進展度合いにより胆嚢と肝臓の一部の切除、または肝門部領域胆

管癌のような拡大手術まで行う。

 

  十二指腸乳頭部癌

多くの場合、遠位側胆管癌と同様、膵頭十二指腸切除術を行います。


⑥広範囲胆管がん

数は少ないですが、広く進展している胆管癌や胆嚢癌の一部では肝臓と膵臓をまとめて取ってくる手術があります。これは腹部手術の最大のもので12時間以上かかります。 

 

●化学療法(抗がん剤治療)

胆道がんの薬物療法は、徐々に進歩しているとはいえ承認されている(使用可能な)抗がん剤の種類は非常に限られており、その成績も十分とは言えない状況です。新たな治療法を研究・開発していくことが急務です。

  1. ゲムシタビン+シスプラチン+デュルバルマブ
  2. ゲムシタビン+シスプラチン+S1
  3. ゲムシタビン+シスプラチン
  4. ゲムシタビン
  5.  S-1
  6. ゲムシタビン+S-1

  

●放射線治療

手術が不可能で遠隔転移のない場合、がんの進行抑制を目的として放射線治療を行う場合がありますが、有効性については十分な検討がなされておらず標準治療ではありません。疼痛を緩和するために行うことがあります。(日本肝胆膵外科学会HPより)

重粒子治療は一部の症状について新たに保険適用されています。(2022年)

 

●免疫療法

  患者さんの中には標準治療の手術や薬物治療ではなく、保険診療ではない免疫療法などを選択する人がいます。しかし、胆道がんに関しては、免疫療法が有効との証拠は一切ありません。また、療法の副作用で薬物療法が受けられなくなる場合もあります。まずは現段階では最も有効な治療である標準治療を受けてください。

(日本肝胆膵外科学会HPより)

 

現在、免疫療法のうち臨床試験により有効性が確認されているのは免疫チェックポイント阻害薬のみです。

その他の自由診療で行われている免疫療法(細胞免疫療法)は、免疫チェックポイント阻害薬とは別のものです。

In partnership with:

2018-Logo