がんゲノム医療

がんゲノム医療は、多数の遺伝子を同時に検査する「遺伝子パネル検査」により、がんに関連する遺伝子変異をみつけ、合う薬がみつかれば治療を行う新しい医療です。

 

下記の点にご留意ください。:

  • 遺伝子パネル検査により、治療薬に結び付くのは、がん全体で10~20%程度
  • 手術をしていない場合は、検査のための組織生検が必要で、体に負担がある

現在、胆道がんでは、ペミガチニブ(FGFR阻害剤)、エントレクチニブ(ROS1/TRK阻害剤)、免疫チェックポイント阻害剤のペンブロリズマブ(抗PD-L1抗体)が保険適用となっており、標準治療後の選択肢として検討できます。(ペンブロリズマブはMSI-highが適格条件)

 

その他、臨床試験(治験)では、他のいくつかの治療薬が試されています。

 

以下は、がんゲノム医療についての概要です。

 

●がんゲノム医療とは

ゲノムとは遺伝子をはじめとした遺伝情報全体を意味し、人体の設計図のようなもので、一人一人違います。がんはこのゲノムの変異が蓄積してがん細胞が無秩序に増殖し、他の組織や臓器に浸潤したり転移したりして発症します。がん細胞のゲノム変異は必ずしも発生した臓器(胃癌なら胃、肺癌なら肺というように)に特有なものではなく、広く様々ながんにおいて同一のゲノム変異が見つかることがあります。

 

がんゲノム医療とは、主にがんの組織を用いて、多数の遺伝子を同時に調べ、遺伝子変異(*)を明らかにすることにより、一人一人の体質や病状に合わせて治療を行う、いわゆる「個別化医療」です。遺伝子検査の結果、遺伝子変異が見つかり、その変異に対応する薬がある場合は、その薬の使用を検討します。

  

▶がんゲノム医療に関する包括的な情報です。↓

よく分かるがんゲノム医療とC-CAT|がんゲノム医療とがん遺伝子パネル検査|国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター(C-CAT) (ncc.go.jp)

 

 

▶下記のビデオ解説(遺伝子変異が重要)も参考になります。↓

左下の「Japanese」を選び、表示された画面中央の「▶」(再生)をクリックすると日本語の音声になります。

Patients Portal – Mutations Matter (cholangiocarcinoma.org) 

教材ビデオ

教材ビデオ2

 

●がんゲノム医療を受けるには

 主治医に相談してみましょう。

   

●遺伝子検査について

がんゲノム医療を受けるために多数の遺伝子を同時に調べる「がん遺伝子パネル検査」は、2020年から、一定の条件(標準治療がない、または終了したなど)を満たせば保険適用で可能になりました。

   

 <検査はいつ受けられるか>

胆道がんと診断され、一次治療が始まったら、がん遺伝子検査に病理組織検体を提出することができます。(検査結果が出るまで2~3か月かかります。)

 

<検査はどこで受けられるか>

保険診療としての「がん遺伝子パネル検査」は、国が指定した「がんゲノム医療中核拠点病院」、「がんゲノム医療拠点病院」および「がんゲノム医療連携病院」でのみ実施可能です。

 

「がんゲノム医療中核拠点病院」(13カ所)、「がんゲノム医療拠点病院」(33カ所)、「がんゲノム医療中核拠点病院」および「がんゲノム医療拠点病院」と連携する「がんゲノム医療連携病院」(202カ所)が公表されています。(2023年4月1日現在)
 

 ▶遺伝子パネル検査の病院は下記のサイトで検索できます。↓ 

がんゲノム医療中核拠点病院・拠点病院・連携病院について|がんゲノム医療とがん遺伝子パネル検査|国立がん研究センター がんゲノム情報管理センター(C-CAT) (ncc.go.jp)

 

  受診の際には、これまでの治療経過を記載した紹介状や、検査のための病理組織検体などが必要になりますので、まずは、かかりつけの医療機関の主治医と相談してください。

 

検査結果と治療について>

日本および海外のがん遺伝子パネル検査の研究データから、全体で治療と関連する遺伝子の変化が見つかる可能性は5割程度と言われています。また、検査の結果、合う薬がみつかり治療につながる可能性は、全体の1割から2割程度と言われています。

 

 

▶がん遺伝子検査に関する情報を網羅したQ&Aです。(すべてのがんに関する一般的な情報です。) 

 よくある質問 | 国立がん研究センター 中央病院 (ncc.go.jp)

  

 

 

(*)遺伝子変異:細胞の中の遺伝子がなんらかの原因で後天的に変化することや、生まれもった遺伝子の違い