代表あいさつ

胆道がんを「治せるがん」に!                                                新薬開発の研究支援に、 ワンコミュニティーで挑む

 私は、2016年、突然に肝内胆管がんと診断され、すでにステージ4でしたが幸運にも大変難しい手術をして頂くことができました。しかし、術後すぐ残肝に転移があり、術後GC療法(化学療法)を33ヵ月間(73回)受け、2020年3月治療を終了し、寛解、経過観察中です。発見から4年が経過しようとしております。発見時は余命1年の瀬戸際でしたが、発見のきっかけとなったクリニックの先生と、東京医科歯科大学医学部附属病院肝胆膵外科の素晴らしいメディカルチームに救っていただき、深い感謝の思いでいっぱいです。

 

診断された時、自分がこのような病気になるとは想像もしておりませんでした。しかし、この奇跡を起こして下さった先生方の献身的なプロフェッショナリズムに感謝し、そして自分の人生を形成してくれた家族とたくさんの出会いに感謝するとともに、この病気になってこのように生きていることに意味があると思うようになりました。このがんを克服して同じ病気の人の希望になれば、この病気と闘う世界に何か貢献できれば-それが自身にとっての希望になり、人生の意味になりました。 

「治療ギャップ」の厚い壁(アンメット・メディカル・ニーズ)

 

がんは長期の経過観察を要し、とりわけこの病気の「難治性」の壁が厚く立ちはだかります。今日医療の進歩は著しく、がんは治せない病気ではなくなり、がん全体の5年生存率は62%*と大きく向上しました。しかし、胆道がんは、唯一根治が期待できるのが外科手術ですが、発見が難しく、発見された時はすでに手術不能の場合が多く、5年生存率が10~30%といわれております。死亡者数が多い(年間死亡者18,000人)にも関わらず、患者数が少なく(年間罹患者数2万人)マイナーなため、研究が遅れをとってきた領域とのことです。そのため、治療選択肢は他のメジャーながんに比べて極端に少なく、例えば乳癌の抗がん剤は60種類ありますが、胆道がんの標準治療薬は3種類**しかなく、しかもその有効性は確認されていないということです。がん研究が進んだ現代でも、このような治療ギャップがあることに衝撃を受けました。

 

そうした折、アメリカのあるドキュメンタリー番組を見ました。南アフリカの女性医師が結核に感染し、一命はとりとめたものの薬の副作用で聴力を失ったため医師を辞めざるを得なくなり、より副作用の少ない新薬の研究支援のためのNPO活動を始め、数年後その努力が実り新薬承認に至ったというものでした。感銘を受けました。人間は無力ではない、草の根活動は意味がある、ひとりの小さな一歩こそが”make a difference”(変化をもたらす)なのだと思いました。

 

有効な治療薬、より多くの選択肢は、患者にとって最大の希望です。患者さんみんなのその願いを結集して、新しい診断・治療法、とりわけ新薬の開発をもっとすすめて頂けるよう、少しでも前進し次の世代へつながる道になれば、それがサバイバーの使命と感じます。

 

心と体と様々なこと、共に考え、共に乗り越える

 

患者さんはそれぞれに様々な状況にあり、治療薬以外にも多角的な支援が必要です。非力な人類は原始から助け合うことで生き残ってきた、利他心をもつヒトの群れだけが生き残ったと考えられ、私たちの遺伝子には助け合うことが本能として組み込まれているといわれます。「孤独の科学」の著者で心理学者のジョン・T・カシオポは、「私たちは進化の作用によって仲間といれば安全を感じ、独りになったときは危機感を覚えるようにできている」ため、「有意義で強い社会的つながりを築くこと」が健康と幸せのカギだと述べております。患者さんひとりひとりが少しでも前向きになれるように、心と体と様々なことを共に考え、共に乗り越えていく会に、足元に灯を灯すことができればと願っております。

 

がんとの闘いは辛く長い道のりですが、医学の力を信じ、自身の生命の力(生きる力)を信じて、同志の方々と一緒にこの難治性がん克服のために精進して参りたいと思います。

 

がん対策基本法に基づく国の「がん対策推進基本計画」(2018)では、難治性がんの研究推進とともに、患者会との連携が明示されており、研究促進のためには患者さんの声と総意、声をあげ続けていくことが重要です。患者さんの声を研究側、国、関連業界に届けてまいりたいと思います。

 

患者さん・ご家族・ご友人、そして一般の皆さまのご参加・ご支援を心よりお願い申し上げます。そしてその願いと声に力を与え、胆道がんを「治せるがんに」するために、臨床・研究の先生方のお力を頂きますよう、また企業の皆さま、ボランティアの皆さまのご支援を頂きますよう心よりお願い申し上げます。

2020年7月                                      

 

胆道がんの会

代表 渡邊眞佐子 

Special Thanks to:

このような活動を始めるに際し、深いご理解を示して下さった東京医科歯科大学医学部附属病院肝胆膵外科の赤星径一先生、技術面で多大なサポートを頂いた関谷美枝さんに、衷心より感謝申し上げます。

 

デイジー(ひなぎく)

花言葉は「希望」。陽に向かって咲くことから”days eye”とも呼ばれております。

ありふれた花ですが、日本では長命菊ともよばれ、生命力が強く、可憐で心なごむその姿を当会のシンボルとし、「希望をもってがんと闘う、がんと生きる」ように願いを込めて、会の愛称を「デイジーの会」としました。

ラテン語の”bellus”(美しい)が語源で、イタリアの国花にもなっているそうです。

 

 

*国立がん研究センター2009-2011

ジェムザール(一般名ゲムシタビン)、シスプラチン(商品名ブリプラチン/ランダ)、TS-1(一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム) 。

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